TEACHER
INTERVIEW 01
講師インタビュー
詩森ろばさんインタビュー
演出家・脚本家
詩森ろば
Roba Shimori
PROFILE演劇俳優コース 担当講師
劇作家・演出家。綿密な取材を元にした骨太な戯曲とスピーディかつ演劇知の魂のようなパワフルな演出で多彩な題材を他にない視点で立ち上げる。2013年「国語の時間」により、読売演劇大賞優秀作品賞。2016年「残花」「insider」により紀伊国屋演劇賞個人賞受賞。2017年「アンネの日」そのほかの成果で芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞。2018年より劇団名を風琴工房からserial numberと変え活動中。
演劇を始めたきっかけを教えてください。
小学校4年生のときのクラブですね。週に1回の必修で選択する授業の中に演劇があり、そこで興味を持ったことがきっかけです。そこから演劇部に入り、最初は役者志望だったんですよ。書くことのほうが得意だったのですが、それが故にあまりそこに価値を見出せなくて。その後役者になりたくて上京しました。当時は芝居を学ぶことができる学校があまりなくて、劇団に入りました。当時ENBUゼミがあったら入学していたのではないでしょうか(笑)
けれど役者の才能はないなあと思い、でも演劇に何かしら携わりたいとは思っていたのでそこから書き始めましたね。それが今までずっと続いている形ですね。人生のほとんど演劇をやっています。
挫折してしまう人が多い世界だと思いますが続けられている理由は何ですか?
向いてはいないけど合っているのだと思います。好きで楽しかったからというのもありましたし、毎回もっとこうしたい、とかここが上手くいかないという悔しさがバネになって続けているのかなと思います。でも演劇だけで食べていくことは最初全然できなくて、ほんとここ最近ですね、それができるようになったのは。金銭面では大変でしたけど、儲けたいという感覚は全然なくて、割が合わないことのほうが多いですが(笑)それよりもやりがいが重要かもしれないですね。コロナ禍で制限されるようになってなおさら、稽古場に行きたいという思いが溢れてきて自分がこんなに演劇がやりたいんだ、ということを実感しました。
演劇を作り続けることの魅力を教えてください。
一番の魅力は人と人がそこにいて、その関わりを生で見せることができる点です。特にこういう個の時代になってきて接触が薄まっている中で、人ってこうやって関わるんだ、触れ合うんだということを目の前で起こし、空間を変えていくことは演劇の使命だし、絶対に必要なことだと思います。特に演劇は逃げ場がないので会話になっていないとか、すぐばれてしまいますからね。稽古場はそういった反応がたくさん生まれる場所なのでとりわけ好きなんです。ENBUの教えの場は生徒の伸びしろが毎回とても大きくて驚かされますし、可能性って無限大だなと思わせてくれるので面白いですね。自分が初心に立ち返る場でもあるのでとても貴重だなと感じています。
学校で演劇を学ぶことの重要性はどんなところにあると思われますか?
安全に学ぶことができるところだと思います。まだ知識がなくまっさらだということを講師の方たちが知っている前提で学べますからね。一度現場に出てしまうと求められるレベルも高いですし、基礎からは教えてもらえませんから。そういった教育機関が日本はまだまだ少ないので増えていくといいなと思います。
教えるうえで心がけていることは何かありますか?
のびのびとやってもらうことと、成果を確実に味わってもらうことですね。そのために多少は厳しいことを言いますが、良くなったと実感することが楽しくなる瞬間だと思いますから。そして1組良くなるとそれが着火剤のように全体に派生していくので。あとは、相手と反応しあうということが技術なんだよ、ということを伝えたいと思いながらいつも取り組んでいます。気持ちとか感覚ではなくて、確実に身に着けられるものなんだよということを学んでもらえたら本望です。
生徒にどういう意識で授業に望んでほしいと思いますか?
とにかく素直な気持ちで臨んでほしいです。良い俳優はみんな素直ですね。あとは自分なりのアイデアがあると尚良いのではないでしょうか。ただ、それを全面的に押し出されてしまうと演出家と壁ができてしまうので、みんなで創りあげていくという意識があるとお互い成長していけると思います。そうやって稽古を重ねて、想像を超えるものができた瞬間は最高に幸せです。そのためには本が読めないといけないし、技術や観察力も必要です。そして良い芝居を見て、良い演出家さんと関わること。ENBUゼミにはたくさんの出会いの場がありますし、もちろん合う合わないもありますから、それを見つけていく場にしていってください。